VMware社が提供するSoftware Defined Storage、vSAN。
この記事ではそのvSANに関して、入門編の情報から他のHCI製品との比較まで、深く掘り下げて解説します。vSANについて詳しく知りたい方には役立つ情報だと思いますので、どうぞ最後までお付きあいください。

1.vSANとは

VMware Virtual SAN (以下 vSAN)についてご紹介します。vSANとは、VMware が提供するSoftware Defined Storage(SDS)です。vSANは、ESXiのカーネルに組み込まれているため、ストレージ機能がハイパーバイザーと一体化している点が特長です。ESXiをインストールしたx86サーバに内蔵されているSSD (Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)を仮想的に束ねて、ひとつのデータストアとして提供することができます。

スモールスタートが可能であるため初期導入コストを抑えられます。導入後に性能や容量の拡張をスケールアップ、スケールアウトの両方に対応しています。スケールアウトは最大64ホストまで拡張できるため、柔軟性の高いハイパーコンバージド インフラストラクチャ(HCI)ソリューションの提供が可能です。また、基本的な機能は慣れ親しんだvSphere Web Clientから操作できますので、ストレージポリシーは仮想マシン単位で動的に変更かつ、仮想マシンを無停止で実行、管理を行えます。導入ハードルがグッと下がりますね。

vSANのメリット

  • 導入後に柔軟に拡張でき、スモールスタートが可能(初期コスト削減)
  • 仮想マシン単位で可用性やパフォーマンスを設定できる
  • HCIやクラウドなど柔軟にインフラを選択することができる(ハイブリッド型も実現)

2.vSANの仕組みを解説

①ノード構成

vSANは通常構成の3ノード構成とROBO(支店、拠点オフィス)や検証環境などに最適な2ノード構成があります。通常のvSAN構成は最低でも3ノード必要となりますが、VMware社の推奨では4台となっています。これはノード障害時の退避先を確保しておくためです。2ノード構成ではノード間を10Gbダイレクト接続します(10Gスイッチコスト削減)。このままではノード障害発生時、スプレットブレーンが発生してしまうため、vSANでは多数決としてWitness(数MBのオブジェクト)をたてることでこれを回避しています。Witnessは仮想環境で動作する仮想アプライアンスです。Witnessとは別ネットワークを使って通信させます。 vsphere+vsanのノード構成

②ディスク構成

vSANでは、性能向上を図る「キャッシュディスク」とデータストアの器となる「キャパシティディスク」があります。キャパシティディスク(HDDの場合)から直接読み込むと時間がかかるため、キャッシュディスクを用意しています。キャッシュディスクは、デバイスタイプとしてSAS/SATA、PCI Express、NVMeといったインターフェースのSSDが必要です。今後、3D Xpointも対応を予定していますので更なる高速化が期待できます。キャパシティディスクは従来のSAS/NL SAS/SATAのHDD構成が可能です。クラスタ単位でハイブリッド構成、オールフラッシュ構成を選択することができます。SSDというと性能面だけフォーカスしがちですが、HDDと比べて消費電力が低く、排熱効率の良さ、故障率の低さなども考慮し選定できるとベストでしょう。 vsanのディスク構成

③ネットワーク

ハイブリッド構成の場合、1Gb/10Gbをサポートしています。1Gbの場合はvSAN専用リンクを使用することを推奨されています。オールフラッシュ構成の場合、10Gbのみをサポート(必須)しています。 vsanのネットワーク構成

3.ハードウェアの構成

仮想化のパイオニアであるVMwareだからこそ、ソフトウェア製品であるvSANは競合のHCIと比べて導入の柔軟性が高いと言えます。複雑な設定が不要でスピーディな導入が可能な HCI アプライアンス VxRail から、主要大手サーバベンダー15社から提供されるvSAN ReadyNode(認定ハードウェア) 、更にご要望に応じたスペックとなるよう個別にカスタマイズされたい企業まで、幅広いオプションが利用できます。 vsanのハードウェア構成

4.HCIとの比較表

ハイパーコンバージドインフラの主要製品を比較しました。VMware vSAN、Nutanix、Microsoft S2Dのそれぞれの特長を説明します。各社の機能比較は以下の表をご参照ください。 vSANは、vSphereハイパーバイザー環境に特化した信頼性の高い仮想化基盤を提供します。VMware環境に特化しているため、信頼性はもちろんのこと、VMwareの各種ソフトウェアと親和性が高い製品です。ハイパーコンバージドインフラを実現する機能vSANは、vSphereのカーネルに組み込まれているため、従来利用中のvSphereにあるvSAN機能をオンにするだけで利用することができます。 また、vSphereのバージョンを上げることで、最新のvSAN機能を容易に手に入れることができます新しい管理ツールは不要で、従来使い慣れたツールを活動できることで、運用管理者の負荷を軽減します。 Nutanixは、VMware vSphere、Microsoft Hyper-Vのハイパーバイザーに対応しています。さらに、Nutanix独自のKVMベースのハイパーバイザーAHV(Acropolis Hypervisor)を無償で提供しています。例えば本番環境は自社に導入実績のあるvSphere、検証環境やコストを抑えたいDR環境には無償ハイパーバイザーのAHVを利用するなど、用途にあわせて使い分けをすることも可能です。Webベースの運用管理ツール"Prism"を提供しています。ハードウェア、ソフトウェア、仮想マシン、拡張、バージョンアップデート、障害切り分けなど仮想環境の運用管理に必要なほぼ全ての作業をPrismだけで容易にすることができます。Prismを活用することで運用管理者の負荷を大幅に削減し、属人的な運用から脱却することができます。 S2Dは、Windows Server 2016の標準機能だけでハイパーコンバージドインフラ環境の構築が可能です。Hyper-VとS2Dが同じクラスタに存在するため、Windowsオペレーションで設定、管理が完結します(新たなツール導入なし)。Microsoftが提供するパブリッククラウドサービス「Azure」で培った技術が使われているために信頼性が高く、Windows Serverの標準機能で環境の構築なため低コストで可用性の高いシステムを導入できます。ハードウェアベンダー各社から検証済みのReady Nodeもラインナップされており企業のニーズに合わせた製品選定が可能です。サポート面では、ハードウェアからゲストOSを含むソフトウェアのサポートを一元化できることも大きなメリットとなります。
vSAN Nutanix Storage Spaces Direct(S2D)
開発元 VMware(2013年にVisto買収) Nutanix Microsoft
提供構成 Hybrid / All Flash Hybrid / All Flash Hybrid / All Flash
ライセンス 物理CPU単位 (VDIパックはセッション数) 機能ベース コア単位
ホスト台数※特殊構成で1または2ノードから構成可 3ノード~64ノード 3ノード~無制限 3ノード~16ノード
OEM提供 あり あり あり
ハイパーバイザー ESXi AHV,ESXi,Hyper-V Hyper-V
圧縮 あり(All Flashのみ) あり なし
重複排除 あり(All Flashのみ) あり なし
暗号化 あり あり(SED) あり(SED)
スナップショット あり あり あり
イレージャーコーディング あり あり あり(ReFS必須)
外部アクセス あり(iSCSI) あり(iSCSI) あり(SMB3)
パブリッククラウド Amazon Amazon,Azure,Google Azure

5.購入方法

vSANのソフトウェアは、Standard・Advance・Enterpriseと3つのエディションが用意されています。また、ROBO環境用、VDI環境用にライセンス体系が分けられています。vSAN6.6からIOPSの制限が行えるQoS機能がStandardから利用できるようになりました。重複排除・圧縮機能はAdvance以上のエディションで提供されています。ディザスタリカバリなどの用途で使われるストレッチ クラスタ機能は最上位のEnterpriseで提供されています。

<ソフトウェア>vSAN エディション表

vSAN 6.6を利用する場合は、ESXiを以下のバージョンにアップグレードする必要がありますので、ご注意ください。 vSAN 6.6 ---- ESXi6.5d SAN 6.6.1 ---- ESXi6.5U1
vSAN Standard vSAN Advanced vSAN Enterprise vSAN for ROBO(Remote Office / Branch Office) vSAN for Desktop(Horizon Advanced / Enterprise)
ライセンス権限 物理CPU単位 物理CPU単位 物理CPU単位 仮想マシン単位 10同時セッション/100同時セッション
最低ホスト台数 3台 3台 3台 2台 3台
Storage Policy Based Management
SSDの読み取り/書き込みキャッシュ
分散RAID(RAID 1)
vSANのスナップショットとクローン
ラックの認識による柔軟な障害対応
レプリケーション(5分のRPO)
ソフトウェアによるチェックサム
オールフラッシュのサポート
ブロックアクセス(iSCSI)
QoS:IOPSの制限
インライン重複削除と圧縮(オールフラッシュのみ)
イレイジャーコーディング:RAID5/6(オールフラッシュ4ノード以上)
ローカル環境の障害を保護するストレッチクラスタ(DR)
保護データの暗号化
補足情報 使用できる機能はvSANのエディションに準拠します。1サイトにつき最大25VMまで利用できます。 使用できる機能はvSANのエディションに準拠します。VDI環境でのみ利用できます。

<ハードウェア>

vSANは、x86サーバの各ハードウェアベンダーと提携し、HCIソリューションを提供しています。自由度の高い、コンポーネントベース(フルスクラッチ)、検証済のvSAN ReadyNode(対応機器リストを公開しています)から、使いやすさを優先したアプライアンスベースのvXRailから選択できます。 お客様の導入環境に適したハードウェアプラットフォームをお選びください。

実はクラウド上でもvSANは導入できる

Azure VMware Solurionなど、VMware Cloud Provider Program(VCPP)が提供するクラウドサービスにてvSANを導入することができます。 Microsoft Azure上でvSANを導入できるAzure VMware Solution は、Microsoft Azureのデータセンターで提供されるフルマネージドなVMware vSphere/ vSANストレージを数クリックで利用できるサービスです。 閉じた環境でパブリッククラウドのメリットが享受できる、究極のハイブリットクラウドサービスといっても過言ではありません。 またオンプレミスで導入するのと異なる点でいうと、AVSはMicrosoft 1st Partyのサービスで提供さているため、VMware vSphere/vSAN環境の運用、維持、サポートはMicrosoftが行います。 (VMwareの問い合わせをMicrosoftに行う。。。すごい時代ですね!) クラウドでvSAN導入を検討、もしくは既存のオンプレミス環境からクラウドへリプレースを検討してみたい方はAVSもぜひ選択肢にいかがでしょうか?

>>Azure VMware Solution とは?3つのメリットをご紹介

 

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Azure導入支援デスク 編集部
Azure導入支援デスク 編集部
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