データカタログとは?
~機能、導入のメリット、導入方法まで解説~

データカタログとは

データが爆発的に増加する現代において、企業内で収集・蓄積される情報量も日増しに増加しています。この多くのデータを活用するには、データを整理、出所や、ガバナンスを効かせることが重要になります。

そこで「データカタログ」を活用すると、企業内外の膨大なデータ資産の適切な管理・検索が可能になり、セキュリティ向上と情報探索性の向上を実現します。

この記事では、そんな効果をもたらすデータカタログの概要、機能、メリットから導入方法まで、その基礎を解説します。

こんな方におススメ

  • データカタログについて基礎からおさらいしたい
  • データカタログの導入を検討している


1.データカタログとは

データ資産の検索や管理を容易にするツールのこと

データカタログは、企業が所有するデータ資産を体系的に整理し、それらを簡単に検索できるようにするツールです。
データソースのメタデータを収集し、統合的なインデックスを作成することで、ユーザーは必要な情報を迅速に見つけ出すことができます。
さらに、データの品質、利用履歴、セキュリティポリシーなどの重要な情報も一元管理されるため、データガバナンスの強化にも寄与します。視覚的な探索ツールや推奨システムを備えていることも多く、非技術的な利用者でも直感的に操作可能です。

データカタログは、ビッグデータ時代における企業の情報資産管理の効率化と価値最大化を実現するための鍵となる存在なのです。

データカタログとは

 

データカタログが誕生した背景

では、なぜデータカタログは必要なのでしょうか。データカタログが誕生した背景には、以下のような要因があります。

  • 大量のデータ資産の増加
    デジタル変革に伴い、企業や組織が生成し、蓄積するデータ量が飛躍的に増加しました。そのため、それらのデータを効率的に管理し、活用する必要性が高まっています。
  • データガバナンスの必要性の高まり
    データの品質、セキュリティ、プライバシーといった面でのコンプライアンスが重視されるようになり、それらを統制する枠組みとしてデータガバナンスが求められています。
  • 自律分散型のデータ管理への移行
    中央集権的なデータ管理から、各部門や個人が自律的にデータを管理し、共有する分散型のアプローチが必要になってきました。
  • ビッグデータやAI技術の進展
    ビッグデータ分析や機械学習、AI技術の発展により、データから新たな価値を引き出すチャンスが増えています。それにはデータの整理やメタデータの管理が不可欠です。
  • データドリブンな意思決定の加速
    データに基づく意思決定がビジネスで重要視されるようになり、そのためには正確でアクセス可能なデータが必要です。

これらの背景から、データの検索性、理解度、信頼性を高め、データ資産を最大限に活用するためのツールとしてデータカタログが開発されたのです。

 

2.データカタログの機能

つづいて、データカタログの3つの機能をご紹介します。

 

①データの検索・探索

データの検索・探索

 

データカタログはメタデータを収集・管理することで、どこに何のデータがあるのか、その所在を検索する機能を提供します。

<具体例>

  • キーワード検索、フィルタリング、分類による効率的なデータ検索
  • ユーザーの行動や関心に基づく推薦システム
  • データの関連性や依存性を視覚化する探索ツール

②アクセス制御

アクセス制御

データカタログは、データを検索できるだけでなく、データへのアクセス権を適切に管理することができます。

<具体例>

  • ユーザーとロールベースでのアクセス権限の設定
  • データアクセスポリシーの管理と適用
  • アクセスログの監視と監査トレイル

③データ品質とライフサイクルの管理

 

データライフサイクルの管理

さらに、データ品質を維持し、データライフサイクルを効果的に管理する機能も備えられています。

<具体例>

  • データセットの依存関係の可視化
  • データ品質の監視と評価
  • データライフサイクル(作成、使用、保管、廃棄)の管理

 

3. データカタログが管理するメタデータとは?

つづいて、データカタログが管理する「メタデータ」について解説します。
メタデータは、文字通り「データに関するデータ」であり、データセットの内容、性質、構造、管理、使用方法などに関する情報のことです。つまり「データに関するデータ」であり、主にデータの特性や属性に関する情報を提供します。
大きく分けて3つのカテゴリに分類されます。

①ビジネスメタデータ

ビジネスメタデータは、ビジネスユーザーがデータを理解し、活用するための情報を提供します。これには、データの内容、ビジネスコンテキスト、データの使用方法などが含まれます。ビジネスメタデータは、データの意味やビジネス上の重要性を明確にし、ビジネスインテリジェンスやデータ分析の基盤となります

②テクニカルメタデータ

テクニカルメタデータは、データの技術的な側面に焦点を当てた情報であり、データエンジニアや開発者がデータを適切に管理し、処理するために必要な詳細を提供します。これには、データの構造、形式、ストレージの詳細などが含まれます。テクニカルメタデータは、データの統合、移行、保守に不可欠です。

③オペレーショナルメタデータ

オペレーショナルメタデータは、データの生成、変更、アクセスに関する運用履歴や状態を記録するメタデータです。これにより、データのライフサイクル管理や監査トレースが可能になります。オペレーショナルメタデータは、データ品質管理、セキュリティ監視、コンプライアンス確保に役立ちます。

 

4.データカタログ導入のメリット

では実際にデータカタログを導入するとどのようなメリットを得られるのか、メリットをご紹介します。

①データ検索が効率的になる

データカタログ導入の1番のメリットは、データ探索が効率的になることです。下記の3つの理由により、それが実現されます。

  1. 集中管理
    データカタログは、様々なデータソースからのデータを一元管理するためのツールです。データカタログを使用することで、組織内のすべてのデータが一元的に管理され、統合されます。このため、ユーザーは複数の場所やデータベースを探し回る必要がなくなり、データを素早く見つけることができます。
  2. メタデータの活用
    データカタログには、データに関する詳細情報(メタデータ)が含まれています。このメタデータには、データの説明、起源、作成日、更新頻度、利用条件などが含まれます。ユーザーはメタデータを使用して、目的のデータを特定し、検索結果を絞り込むことができます。
  3. 高度な検索機能
    データカタログは強力な検索機能を提供します。キーワード検索だけでなく、フィルタリング、タグ付け、分類などの機能を使用して、データを素早く検索することができます。さらに、一部のデータカタログは自然言語処理(NLP)を使用して、ユーザーが日常言語で簡単に検索できるようにサポートします。

②データガバナンス強化につながる

メリットの2つ目は、データガバナンス強化につながることです。下記の理由により、それが実現されます。

  1. データの可視性向上
     データカタログは、組織内のデータの可視性を向上させます。データカタログを使用することで、どのようなデータが組織内に存在し、どこに格納されているかが明確になります。この可視性は、データガバナンスの基本的な要件の1つです。
  2. アクセス制御の強化:
    データカタログは、データにアクセスする権限を管理するための機能を提供します。特定のデータセットやデータソースに対するアクセス権を定義し、必要な権限を持つユーザーにのみアクセスを許可することができます。これにより、データのセキュリティが強化され、機密性の高いデータへの不正なアクセスを防ぐことができます。
  3. コンプライアンスの遵守
    データカタログは、データの利用条件や規制要件を文書化し、管理するための機能を提供します。組織内のデータがどのように使用され、誰がアクセスできるかを明確にすることで、規制要件やコンプライアンスの遵守が容易になります。
  4. データ品質の管理
    データカタログは、メタデータを使用してデータの品質を評価し、問題がある場合には修正や改善を行うことができます。また、データ品質の指標や基準を設定し、定期的に監視することで、データの品質を維持し続けることができます。
  5. データライフサイクルの管理
    データカタログは、データの作成から廃棄までのプロセスを明確にし、データの保管期間や利用条件を定義することができます。これにより、不要なデータの保持や廃棄を防ぎ、データの適切な管理が実現されます。

③ナレッジの共有が促進される

データカタログは、前述の通りデータ資産の検索や管理を容易にするツールです。
ですので、(企業文化に依存するところも大きいかもしれませんが、)副次的な効果として、チーム間での情報のサイロ化の解消を実現し、異なる部門間の活用促進を実現できます。

また、データカタログは様々なプロジェクトや分析で得られた知見を統合し、再利用可能なリソースとして保存することを可能にします。
これは新たなプロジェクトや分析を始める際の時間と労力の削減につながり、効率的なナレッジマネジメントを実現します。

また、データカタログを使用することで、組織内の専門知識が可視化され、メンバー間でスキルや経験を共有する機会が増えます。これにより、チーム全体の学習曲線が短縮され、個々の従業員だけでなく組織全体の能力が向上する、ということです。

 

5.データカタログの導入方法

では最後に、データカタログの導入についてその手順を解説します。

①ゴールを決める

目標と要件の明確化は、データカタログ導入プロセスの最初のステップであり、プロジェクトの成功に不可欠です。この段階では、組織がデータカタログを通じて達成したい具体的な目標と、それを実現するために必要な要件を定義します。

目標の設定

ビジネス目標の理解:
データカタログを導入する背景にあるビジネス上の課題や目標を明確にします。例えば、データの発見性を向上させる、データガバナンスを強化する、データ駆動型の意思決定を促進する、などです。

成果指標の特定
目標達成を測定するためのKPI(重要業績評価指標)やその他のメトリクスを特定します。これには、データアクセス時間の短縮、データ利用率の向上、データ品質の改善などが含まれます。

 

要件の特定

機能要件:
データカタログが提供するべき基本的な機能や特性を特定します。これには、メタデータ管理、検索機能、アクセス制御、ユーザーインターフェースの使いやすさなどが含まれます。

非機能要件:
セキュリティ、スケーラビリティ、パフォーマンス、互換性など、システムが満たすべき技術的な要件を定義します。これらはシステムの安全性と信頼性を保証するために重要です。

データガバナンスとコンプライアンス:
データの使用と管理に関連するポリシー、規制遵守の要件を考慮します。データプライバシー法(例えばGDPRやCCPA)に準拠していることが必要かもしれません。

利害関係者のニーズ:
データ所有者、データ利用者、IT部門など、関連するすべての利害関係者からのフィードバックを収集し、彼らのニーズと期待を理解します。

 

②プラットフォームを選定する

データカタログのプラットフォーム選定においては、内製(自社開発)するか、もしくは一般的に市場にある既製のツールを利用するか、の二つの選択肢があります。それぞれの選択肢にはメリットとデメリットが存在します。
なので、組織の具体的なニーズや目標を考慮し、それらを満たすことができるか、というビジネス要件、運用など長期的な視点も含めたコスト、また、開発期間や必要な人材リソースを考慮し、検討することをお勧めします。

方法①内製する

メリット

カスタマイズ性:
組織の特定のニーズに合わせて設計し、カスタマイズすることができます。

柔軟性:
将来的な変更や拡張が容易であり、組織の成長や変化に柔軟に対応できます。

デメリット

開発とメンテナンスのコスト:
初期開発だけでなく、継続的なメンテナンスやアップデートに多大な時間とコストがかかります。

リソース:
専門的な知識を持った開発チームが必要であり、そのリソースが他のプロジェクトから割かれることになります。

リスク:
新しいシステムをゼロから構築する際には、未知の問題や遅延が発生するリスクがあります。

 

方法②既成のツールを使う

メリット

迅速な導入:
既製のソリューションはすぐに導入可能であり、開発期間を要しません。

実績と信頼性:
多くの企業で利用されているツールは、その実績と信頼性が確認されています。

サポートとアップデート:
製品サポートや定期的な機能アップデートが提供されるため、最新の機能を利用できます。

デメリット

コスト:
ライセンス料やサブスクリプション費用がかかり、長期的には高額になることがあります。

カスタマイズの限界:
組織特有の要件に完全に合わせるためのカスタマイズが限られることがあります。

6. データカタログの製品例

現在データカタログは様々な製品がありますので上記の「方法②既成のツールを使う」で進められる方多いです。
そこで、代表的なデータカタログ製品とその特長をご紹介します。

Talend

<特徴>

  • オープンソースベースのソフトウェアなため、コミュニティ版が無料で利用できます。
  • カスタムメタモデルの定義、自動データ分類、カスタマイズ可能なオブジェクトとユーザールール、データの系統と変換ロジックのエクスポートなど、データガバナンスを強化する機能が豊富です。

 

Trocco

<特徴>

  • メタデータの自動取得および手動定義が可能で、ユーザーはこれらのメタデータを参照できます。カタログデータとメタデータは毎日自動で取得されます。
  • データカタログ構築時にユーザーの検索ニーズを特定し、それに応じたメタデータスキーマを作成します。また、セキュリティのためにデータへのアクセス権を厳格に設定することができます。
  • 直感的かつ洗練されたUI/UXを提供し、データエンジニアリング作業の効率化をサポートします。BigQueryの分割テーブルやクラスタリング、スキーマの自動推論など、技術的な機能も充実しています。
  • Troccoは特に日本発のサービスであり、日本語ネイティブのUIやサポート体制が特徴です。これにより、英語に不慣れな日系企業でも扱いやすくなっています。

 

Microsoft Purview

<特徴>

  • データの可視性強化:組織全体にわたるデータに対する可視性を提供します。
  • ライフサイクル全体での機密データの保護・管理:データの所在地に関わらず、機密データを保護・管理します。
  • 新たな包括的な方法でのデータガバナンス:オンプレミス、マルチクラウド、SaaS環境にまたがるデータサービスを管理します。
  • 重要なデータリスクおよび規制要件の管理:組織のコンプライアンスリスクを最小化し、規制要件に対応します

Microsoft Purview概要資料Microsoft Purview概要資料

 

Databricks

<特徴>

  • 3レベルの名前空間を介してデータを組織化し、データの分類とアクセスをより柔軟に管理します。
  • 自動データ系統により、データの流れとその変更の影響をエンドツーエンドで追跡し、診断することが可能です。
  • オープンソースのDelta Sharingをサポートし、異なる組織間でのセキュアなデータ共有を可能にします。
  • データガバナンスを、マルチクラウド戦略に対応させ、クラウド固有のセキュリティとガバナンスモデルを簡素化します

Databricks概要資料Azure Databricks概要資料

 

7.まとめ

以上、データカタログについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか?

データカタログ導入は、効率的なデータ探索は意思決定の迅速化を促し、ビジネスのアジリティを高めることにつながります。つまり、正確な情報に基づいて行動できるようになることで、企業全体の生産性が向上します。

データ活用に関するお悩み、データカタログ導入についてご相談がある際にはお問合せフォームよりご相談ください。

どうぞよろしくお願いいたします。

この記事を書いた人

Azure導入支援デスク 編集部
Azure導入支援デスク 編集部
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