1.はじめに

皆さんこんにちは。

今回は、Databricks AutoMLの使用方法について説明していきます。

2.前提要件

実施する際の前提条件は

・操作ユーザーは Azure Databricks ワークスペースにアクセス権限があること。

・操作ユーザーは、ノートブックの作成・実行権限があること。権限が付与されていない場合、管理者に権限を付与してもらう様に依頼してください。

3.Databricks AutoML の概要

Databricks AutoML は、機械学習、および深層学習モデルを自動的に構築するために使用されるツールです。 このツールには次の利点があります。

  • データ前処理、特徴エンジニアリング・特徴抽出、ハイパーパラメータ調整、モデル評価など、機械学習・深層学習モデルの構築プロセスにおけるすべてのタスクを、データエンジニアの介入をあまり必要とせずに自動的に処理します。
  • モデル選択の時に様々なモデル構造を評価するため、モデル構築においてMLFlow と組み合わせることができます。
  • MLFlow レジストリと組み合わせて、トレーニング プロセス全体を管理し、モデルを使用します。
  • モデルの使用法を自動的に構築し、モデルのデプロイメントを容易にします。

4.Azure Databricks ワークスペースを起動する

① AutoML の機能を実行するには、まず Azure Databricks ワークスペースにアクセスします。

②「Lauch Workspace」をクリックして Databricks ワークスペースを起動します。

5.Databricks でクラスターを作成する

Databricks AutoML は、Databricks ML Compute Cluster を使用してモデルのトレーニングを実行します。

Databricks AutoML を使用する前に、コンピューティング クラスターを事前に初期化する必要があります。

① Databricks ワークスペースの左側のサイドバーで「Compute」をクリックします。

②「Create compute」ボタンをクリックします。

クラスター名: 任意のクラスター名を入力します。

クラスターモード: シングルノード (クラスターはテストのみに使用されます)

ランタイムバージョン: Databricks ランタイム 9.1 ML 以降。クラスター ML (機械学習) を使用する必要があることに注意してください。 ここでは、Scala 2.12 で Runtime 11.3 を使用します。

ノードタイプ: Standard_DS3_v2 (デフォルト)

③ 設定が完了したら「Create compute」ボタンをクリックします。

6.Databricks AutoML のトレーニング データをインポートする

まず、Databricks AutoML に使用するデータをインポートします。
Databricks AutoML は Spark DataFrame のデータのみを使用できます。 ただし、Spark DataFrame は、次のように様々なソースからデータを受信できます。

  • CSV (Unity カタログ・Hive メタストア、および Databricks Delta テーブル経由)
  • Pandas DataFrame (Spark Pandas API 経由)
  • RDBMS (Spark データベース コネクタ、および JDBC コネクタ経由)
  • Parquet (Unity カタログ・Hive メタストア、および Databricks Delta テーブル経由)
  • Protobuf (Unity カタログ・Hive メタストア、および Databricks Delta テーブル経由)
  • その他

今回のデモでは、データを CSV ファイルとして使用します。

以下のようにデータを作成します。

  • データを含む CSV ファイルを Unity カタログにアップロードします。
  • Unity カタログは CSV ファイルから Databricks Delta テーブル にデータを自動的に転送します。
  • Spark を使用して Databricks Delta テーブルのデータを Unity カタログから Spark DataFrame にロードします。(このプロセスは、ユーザーに表示されずに、AutoML によって自動的に実行されます。)

【データの概要】

  • 今回のデモでは、Kaggle の Red Wine Quality データセットを使用して、ワインの品質を予測します。
  • 分類問題に変換するために、 Databricks のNotebookを使用して、quality スコアを元に quality カラムをquality ブール に変換しました。

次のように、データを含む CSV ファイルを Unity カタログに Delta テーブルとしてアップロードします。

① Azure Databricks ワークスペースで、「New」>「File upload」をクリックします。

② ファイルのアップロードウィンドウで、アップロード対象のファイルをボックスにドラッグアンドドロップして、または「browse」をクリックしてアップロード対象のファイルを選択します。

③「winequality-red.csv」CSV ファイルを選択します。

④ カタログとスキーマを選択し、csv ファイルから作成されたテーブルに名前を設定します。

⑤「Create table」をクリックします。

⑥ 新規のNotebook を作成して、quality カラムをデータセット内のquality ブール に変換します。

⑦ Databricksワークスペースの左メニューにマウスをホバーして、「NEW」 → 「Notebook」をクリックします。

⑧ 新規作成したノートブックの画面が表示されます。ノートブックに名前を付け、デフォルトの言語として Python を選択します。

⑨ 以下のコードをノートブックにコピぺして、実行します。

quality スコアが 7 以上の場合、カラムの値が「Good」となります。それ以外の場合は「Not Good」となります。

⑩ 以下のコードをノートブックにコピぺして、実行します。

from pyspark.sql.functions import when

# Convert the value of column ‘quality’ to ‘Good’ if ‘quality’ >= 7, otherwise to ‘Not Good’

df_new = df.withColumn(‘quality’, when(df[‘quality’] >= 7, ‘Good’).otherwise(‘Not Good’))

# Overwrite the Delta table with the updated DataFrame

df_new.write.format(“delta”).mode(“overwrite”).option(“overwriteSchema”, “true”).saveAsTable(“catalog.test.winequality_red”)

変換後のデータには、ワインの組成指数とそのワインの品質 (Good、Not Good) が含まれます。

7.AutoML でモデルをトレーニングする

【背景】

以下の前提条件でAutoMLを使った機械学習モデルを作成します。

  • 目的:ワインの成分に基づいてワインの品質 (Good、Not Good) を予測できる ML モデルを作成します。(Red Wine Quality データセットを使用)
  • 機械学習の問題のタイプ:分類問題(Classification)
  • 予測ターゲット:quality 列
  • 特徴:
    • quality 列を除き、データセット内の残りのフィールドはワインの成分に関する情報です。
    • ワインの成分に関する全ての情報(全ての残りのフィールド)をトレーニング プロセスに使用します。
  • 評価メトリクス:F1-score
  • トレーニングフレームワークは以下の通りです。
    • XGBoost
    • Scikit-learn
    • LightGBM
  • タイムアウト時間: 5 分

※ AutoMLは評価メトリクスが改善しない場合、トレーニングを中断することがあります

クラスター、及び入力データのテーブルを作成した後、Databricks Machine Learning の AutoML Experimentを作成します。

① Databricks ワークスペースの左側のサイドバーにマウスをホバーして、「Experiments」を選択します。

②「Create AutoML Experiment」をクリックします。

③ 定義した背景に従って AutoML を設定します。

  • クラスター: 事前に作成されたコンピューティング クラスターを選択します。
  • 機械学習の問題のタイプ:分類問題
  • 入力学習用データセット: Red Wine Quality データセットの作成したデルタ テーブルを使用します。
  • 予測ターゲット: quality 列
  • エクスペリメント名(Experiment Name): 自動入力またはカスタム名を入力します。

④ 拡張構成(任意):

  • タイムアウト: 5分
  • トレーニング フレームワーク: lightgbm、sklearn (scikit-learn)、xgboost

⑤ 全ての構成を設定したら、「Start AutoML」をクリックして、分類アルゴリズムの様々な反復をトレーニングします。

その後、設定したタイムアウト時間に従ってデータセット トレーニングが自動的に実行されます。

「Start AutoML」をクリックした後、Databricks AutoML はデータ探索用ノートブック (トレーニング用の使用データを詳しく説明するためのノートブック) を作成します。

データ探索用ノートブック:AutoML から自動的に生成されるノートブックであり、簡潔でデータを視覚化し、解釈するのを支援することを目的としています。

データ探索用ノートブックでは、データを次の通りに説明します。

  • 概要:データの概要、変数の数、重複行の数、NULL とゼロの数など。
  • 変数:変数内のNULLとゼロの数、変数の最大・最小、異なる値の数、度数分布表、相関関係など、各変数の概要。
  • Interations:2 つの任意変数間のデータの干渉を表します。
  • Correlations:ヒートマップは、2 つの任意変数間の相関の程度を示します。
  • 欠落した値(missing values):変数ごとの欠落した値の数。
  • 最初の行・最後の行:最初の10行・最後の 10行。
  • 重複行:最も重複された上位 10 行。

AutoML は、複数のライブラリ、アーキテクチャ、ハイパーパラメータのセットなどを使用して多くのモデルを生成します。それに、生成されたモデルの中に最も高い評価指標(f1_score)があるのモデルを検索します(ベスト モデル)。

トレーニング プロセスの後、AutoML は、トレーニングされたモデル、選択した評価指標(f1-score)等のトレーニング結果を表示します。

結果を保存して、複数のAutoML Experiment 間での結果を比較するために、AutoML を MLFlow と組み合わせて実行できます。

トレーニングが完了した後、Databricks AutoML は最適なモデルに対応するノートブック (最高モデルのノートブック) を生成します。

AutoML エクスペリメントの画面で、「View notebook for best model」をクリックします。

このノートブックは Databricks AutoML から自動的に生成され、モデルのトレーニング方法、最適なモデル品質、モデルの実現方法について説明することを目的としています。

ノートブックには次の情報が含まれます。

  • モデル構造:最適なモデルで使用される構造です。 今回の例ではロジスティック回帰です。
  • データのロード:トレーニング時に使用するデータをロードする方法、およびフィルター メソッドを使用したトレーニング時に使用する特徴を選択する方法です。(サポートされている列を選択する)
  • 前処理:データの前処理(空のデータの埋め込み処理、train-validation-test のデータセット分割操作などを含む)
  • トレーニング:ハイパーパラメーターの最適化、wrapper-method の機能選択、モデルのトレーニングなどのプロセスが含まれます。トレーニング プロセスの後、ノートブックには train-validation-test のデータセットに対応する f1-score も表示されます。
  • 推論:モデルを使用して新しいデータを予測する方法です。
  • また、ノートブックには、confusion matrix、ROC curve、Precision-Recall Tradeoff curveなど、他のモデルの測定結果も表示されます。

8.Databricks AutoML トレーニング結果を評価・改善する

前述の通り、Databricks AutoML は評価指標(f1-score)及び、最も最高評価の高いモデルに対応する最適なモデルのノートブックを表示します。

また、トレーニングされたモデルのノートブック(最適なモデルに加えて)も、モデル リストの「Source」カラムに表示されます。

他の該当モデルのノートブックが、最適なモデルのノートブックの情報および、構成と同じです。

Databricks AutoML は、最も高い f1-score 値に従ってモデルを自動評価し、最適なモデルを提案します。そのため、AutoML でトレーニングされたモデルを評価し、選択する必要はありません。

ただし、多くの場合、AutoML での最適なモデルが、必ずしも良いモデルであるとは限りません。今回のデモでは、最適なモデルの f1-score が 0.462 となります。

  • そのため、その最適なモデルを次の通りで再評価する必要があります。
    • トレーニング後モデルの改善方法((転移学習、量子化など))があれば、適用した方が良いです。
    • モデルの評価指標が低すぎる場合、トレーニング プロセス (アルゴリズムと構造の誤り、貧弱なハイパーパラメーター、エポック不足など) またはデータ (データ不足、不適切な特徴抽出など) に問題があるということです。各課題(モデルの構成、ハイパーパラメーター、データの修正など)を見直し、再度トレーニングする必要があります。

操作性と高速性があるので、f1-score が低いモデルが使用される場合もあります。

  • 他のモデル(最適なモデルの以外)をDatabricks AutoMLで使用したい場合、「Source」カラムの「Notebook」をクリックします。(前述の通り)

今回は、AutoMLの使用方法について説明していきますので、この最適なモデルが良いモデルであると想定し、使用します。

9.Databricks AutoML の最適なモデルを使用する

最適なモデルの使用をデモするために、次のように標準的な推論・予測フローを構築します。

  • モデルのロード・準備
  • データのロード・処理
  • 推論・予測:処理済みのデータがロードされ、推論・予測されます。

このフローの手順は、データとモデルの複雑さによって、細かな手順に分けされるか、または複数の処理があります。

Unity CatalogのDelta テーブル から「quality」カラムの値を予測するためのテスト データを使用します。

以下の例では、「winequality_infer」テストデータ をDatabrick に Delta テーブルとしてアップロードします。

データのアップロード方法は、 Kaggle の Red Wine Quality データセットのアップロード方法と同じです。(6.項目のご参照)

Databricks AutoML からのモデルを推論・予測プロセス向けに使用するために、下記の情報が必要です。

  • Model_URI
  • 新規ノートブック( model_uri を使用してモデルをロードし、データを処理できるようにするため)

実行後、AutoML Experiment は最適なモデルをMLFlow モデル レジストリにアーティファクトとして記録し、そのモデルに model_uri という一意の識別子パスを割り当てます。

model_uri には次の情報があります。

  • runs:これは、MLFlow モデル レジストリ内の全てURI モデルのプレフィックスです。
  • { mlflow_run.info.run_id }:これは、モデルがトレーニングされた実行の ID です。
  • /model:これは実行時のモデルへのパスです。

Databricks AutoML によって生成された最適なモデルの model_uri は、「 View notebook for best model 」の最後にあります。

モデルを使用するには、新規のNotebook 作成が必要です。

① Databricksワークスペースの左メニューにマウスをホバーして、「NEW」 → 「Notebook」をクリックします。

② 新規作成したノートブックの画面が表示されます。ノートブックに名前を付け、デフォルトの言語として Python を選択します。

③ 以下のコードをノートブックにコピぺします(9.項目のご参照)。

最適なモデルが MLFlow モデル レジストリに記録されたので、mlflow と model_uri を使用して、モデルをロードして実行できます。

最適なモデルは、MLFlow モデル レジストリ (名前付きモデル) に登録することもでき、モデルの状態 (ステージング、本番、アーカイブ)、モデルのバージョン、およびMLflowのモデルサービング等を確認できます。

今回のデモでは、MLFlow モデル レジストリの機能と登録方法については深く説明しません。

④「Shift+Enter」を押して上記のコードを実行します。

Databricks AutoML でトレーニングされたモデルが、入力データを DataFrame として受信するため、前の手順でアップロードされた Delta テーブルのデータを DataFrame 形式で読み込みます。

推論処理用のデータは、推論の処理前に、トレーニング データの処理方法と同様に処理され、モデルに適う必要があります。

⑤ 以下のコードをノートブックにコピぺし、「Shift+Enter」を押してコードを実行します。

⑥ DataFrame を作成した後、次のコードを実行して INTEGERを FLOAT 64 に型変換します。

⑦ 推論・予測を実行するには、model.predict(df_pandas) を使用します。(df_pandas が、作成された DataFrame です)

⑧ 前の手順で作成された DataFrame を呼び出して、予測結果を表示します。「prediction」カラムの値が、該当レコードの「fixed acidity」から「alcohol」カラムまでの値によって決まれます。

10.まとめ

本連載では、
Databricks AutoMLの使用方法について詳細に説明していきます。

今回の記事が少しでもDatabricksを知るきっかけや、業務のご参考になれば幸いです。

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