”VDIの定石”は”落とし穴”?導入、移行、運用のフェーズ別で理解する、VDIとの「上手な付き合い方」

VDI留意点

VDI の導入から移行、運用、そしてVDI を活用したワークスタイル改革(働き方改革)における留意点とその対策を紹介します。

「当社もいよいよ仮想デスクトップインフラ(以下VDI)を導入しよう。早速、SIer に見積もりを依頼して……」

──そうお考えの方は少しお待ちいただけないでしょうか。

近ごろ、「SIer /ベンダー任せで導入したVDI環境でリソースが想定外に切迫し、十分なパフォーマンスが出なくなった」「I/O 性能の不足が原因だと思ってストレージを増強したのに、すぐにパフォーマンスが低下してしまった」などという話をよく聞きます。

こうした問題が生じる原因は、自社の利用実態について導入や運用のフェーズで十分なアセスメントやモニタリングを行わず、適切な環境を構築しなかったことにあります。

世間に流布する“VDI の定石” を妄信していると、あなたも思わぬ“ 落とし穴” にはまるかもしれません。

VDIトラブルの“ 駆け込み寺” として、我々は多くの企業の問題解決を支援して来ました。

VDI の「導入」「移行」「運用」の各フェーズで落とし穴があります。

ただ漫然と定石と思われる方法で導入していては、十分な成果を達成することはできません。

「落とし穴を回避して、いかに成果を出すか」が技術者の腕の見せ所であり、同じ「VDI の導入」でも成果を最大化していく方法を知っておかなければなりません。

VDI導入フェーズ:定石の手法を疑う目を持つべし

VDI の「導入」フェーズでは、現状のリソース利用の実態を把握するアセスメントが必要不可欠です。

ここでいうアセスメントとは、VDI 製品の“ オマケ” として提供されるようなものではなく、アプリケーション稼働状況やリソース利用量などの詳細を調査し、過剰な投資を防ぎ、性能とコストとのバランスを取る作業を指しています。

例えば、最近はVDIのパフォーマンス向上の切り札として、ストレージなどのI/O 性能を強化することがトレンドです。

しかし、実はVDI 環境のパフォーマンス不足の根本的な原因にストレージI/O が影響しているケースは多くはなく、CPU やメモリでリソース不足が生じて処理が滞留し、その影響で性能が低下しているケースが大半なのです。

こうした実態を把握せず、定説を妄信してI/O の強化を図るだけでは、一時的に状況が改善したように見えても、再びパフォーマンス不足に陥ってしまいます。高価なインフラ投資が無駄に終わってしまうのです。

このような落とし穴を回避するには、事前のサイジングでリソースのバランスを検討する必要があります。

ユーザー/アプリケーションごとのCPU やメモリ、ストレージI/O などの使用状況を正確に調べ、適切なインフラ設計につなげることが重要です。

もちろん、調査の結果「Web ブラウザのタブを過剰に開いているためリソースを浪費している」「クライアントを長期間起動しているためリソースの無駄使いがある」といったユーザーが見つかったら、その改善を促すことも必要です。

移行フェーズ:“ 人海戦術サポート” を回避する方法を模索せよ

“ 人海戦術サポート” を回避する方法

「移行」フェーズでは既存の物理PC やVDI クライアントにあるデータを新環境に移す作業が必要になります。

この作業の「よくある方法」は、物理PC であれば「移行作業スタッフが各ユーザーの環境にログインして、ドキュメントやプロファイルなどのデータを手作業で移行する」、VDI であれば「ユーザーごとにファイルサーバに必要な情報を移行し、新環境にログインしたら各自が自力で再設定する」というものです。

しかし、それらは手作業ゆえにデータのコピー漏れや誤消去の可能性があり、情報漏えいなどのセキュリティリスクも懸念されます。

また、ユーザー自身のデスクトップ環境などを正確に移行することも難しく、再設定作業を自力で行えないユーザーがいれば、サポートする必要もあります。

多数のユーザー環境を手作業で移行する場合、限られた休日で作業期間を確保するのが難しく、移行プロジェクトが長期化することもよくあるのです。

こういった人海戦術に頼るよりも、自動移行のソリューションを利用することで効率かつ安全にデータを新環境に移すことができます。

運用フェーズ:継続的モニタリングとカイゼンを追究すれば資産合理化にも効果

「運用」フェーズで念頭に置くべきは、「VDIの使われ方は変化し続ける」ということです。

VDI移行をきっかけにモバイルを活用するなど、使い方を変えるユーザーは少なくありません。また、担当業務が変われば使用するアプリケーションも変化します。

当初のサイジングでは問題がなかった場合でも、長期間運用をすると利用者の環境がそもそもの想定から大きく変化していきます。

近年は動画のコンテンツが増えたため以前よりもリソース使用量は増えているし、アプリケーションをアップデートしてもリソース使用量は増加しています。

状況を把握して不足が生じる前にリソースを強化したり、過剰な設備投資を避けたりするためにも、継続的なモニタリングは必須です。

VDIでは、ユーザーが使っていないときにもリソース使用量が増減する場合がありますが、その原因はOS の自動アップデートかもしれないし、マルウェアが動作しているのかもしれません。

そうしたサービスの動作状況やイベントログまで子細に確認しなければ分からない事も多くあります。

社内のVDI 利用実態から「インストールされているが、使われていないアプリケーション」を特定し、それらのライセンス数を減らしてコストを削減するなど、アプリケーション資産管理を行っている企業もあります。

VDI 導入をワークスタイル改革(働き方改革)の一環と位置付ける企業は多いですが、「いつでも、どこでも仕事ができる」VDI の利点はそのまま「いつでも、どこでも仕事をしてしまう(やりすぎしてしまう)」リスクにもつながります。こうした場合は、アプリケーションの稼働状況や操作の有無を把握し、就業の有無などの勤怠を確実に把握する必要があります。

以上、VDI の導入から移行、運用、そしてVDI を活用したワークスタイル改革(働き方改革)における留意点とその対策を紹介しました。これらの落とし穴や各フェーズのポイントを知っておくだけでも、VDIの導入を成功へ近づけるかと思います。

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