導入後の運用を見据えたVDI(デスクトップ仮想化)と管理ツールの選び方と比較

導入後の運用を見据えたVDI(デスクトップ仮想化)と管理ツールの選び方と比較

現在、仮想化ソリューションを提供している企業を中心に、各社からVDIサービスが提供されています。今回はそのようなVDIサービスの中から主要なものをご紹介し、その特徴を比較します。

また、VDI環境を運用する上で重要な役割を果たす「管理ツール」に関しても、各サービスでどのようなものが用意されているのか合わせて調査しました。VDI導入/選定、および運用のイメージを描く際の一助にしていただければと思います。

主要VDIサービスの特徴比較

それでは実際のサービスを比較してみましょう、今回取り上げたのは、VMware社の「Horizon」とシトリックス(Citrix)社の「XenApp」「XenDesktop」、およびマイクロソフト社の「Microsoft VDI」の3つのサービスです。

●1-1.VMware 「Horizon」

さまざまな仮想化ソリューションで実績のあるVMwareが提供するVDIサービスです。単一のVDIとアプリケーション仮想化プラットフォームを通じて仮想リモートデスクトップやアプリケーションをプロビジョニングすることで管理を効率化できたり、ユーザーのコンピューティング環境に動的に対応するポリシーを用いて、リソース全体を管理したり保護したりすることができる、などの特徴を持ちます。

その他にも、 Just-in-time Management Platformを使用して、最新のデスクトップ環境やアプリケーションなどを素早くユーザーに展開することができます。

VDIではユーザーが時間や場所、デバイスなどに関係なく業務を行うことができますが、Horizonではオンプレミス環境/クラウド環境を問わず、WindowsやLinuxのデスクトップとアプリケーションを効率的な方法で提供し管理することができます。また、他のVMwareの仮想化ソリューション、vSphereなどとのシームレスな連携ができることも大きな特徴です。

関連するソリューションとして、統合ワークスペースからユーザー各自が各種のアプリケーションに簡単にアクセスできる「Horizon Apps」や、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)とVDIを組み合わせて仮想デスクトップ環境を提供する「Horizon Cloud with On-Premises Infrastructure (オンプレミス型)」、クラウドホスト型のデスクトップ環境やアプリケーションをさまざまなデバイスに簡単に展開できる「Horizon Cloud with Hosted Infrastructure(クラウド ホスト型)」などが提供されています。

●1-2.シトリックス 「XenApp」、「XenDesktop」

シトリックスも仮想化ソリューションで実績のある企業です。そのシトリックスが提供するVDIサービスが「XenApp」と「XenDesktop」。両者の違いは、XenAppはさまざまな環境でアプリケーションを利用可能にするアプリケーション仮想化ソリューションで、XenDesktopはXenAppの機能にVDIデスクトップやリモートPCアクセス機能などを付け加えたものです(従って、狭義でVDIというとXenDesktopの方を指します)。

XenDesktopでは、完全に機能するWindowsまたはLinuxの仮想デスクトップアプリケーションを配信することができ、さらに3D CADやエンジニアリング系などの性能要求の厳しいアプリケーションでも通常の環境と同じレベルで操作することができます。また、DesktopPlayerの機能を使うことで、ネットワークに接続していない環境でも仮想デスクトップ環境を利用することができます。

XenDesktopでは、管理者がユーザーにパーソナライズしたデスクトップ環境を提供しながら、マスターイメージを簡単に一元管理することができます。さらに、管理者はマスターOSイメージとは別にアプリケーションをパッケージ化して管理することで、デスクトップやサーバーのイメージに影響を与えることなくアプリケーションのインストールやアップデートができ、複数部門ごとのイメージ管理をシンプルに行うことができます。

●1-3.マイクロソフト 「Microsoft VDI」

「Microsoft VDI」は、マイクロソフトのWindows Serverの機能として提供されるデスクトップ仮想化ソリューションです。Windowsはもちろん、Windows RT、iOS、Mac OS X、およびAndroidデバイスにWindows環境を表示でき、帯域幅が低いネットワーク環境の場合でもパフォーマンスに優れ、再接続時間も短いという特徴を持ちます。

Microsoft VDIでは、仮想マシン用のストレージの階層化やデスクトップの重複除去、帯域幅やCPU、ディスク使用などのリソースの動的再配布によって効率を高めています。また、セッションベースのデスクトップ、個人用のデスクトップまたはプールされたデスクトップの内、ユーザーに適したタイプのデスクトップを単一のプラットフォームから展開することができます。

さらにRemoteAppを使うことで、ユーザーがVDIホスト上にあるアプリケーションをローカルのアプリケーションと同等の使用感で使うことができるように、各クライアントに展開することができます。

各サービスの管理ツールの紹介

続いて各VDIサービスの運用時に必要となる管理ツールをご紹介します。

●2-1.VMware Horizonには「vRealize Operations for Horizon」

VMware Horizon用の管理ツール「vRealize Operations for Horizon」では、 Horizon環境だけではなくXenDesktopやXenApp環境の監視することもきます。また、監視対象をVDI環境だけではなくデータセンターにまで拡張することができ、ハイパーバイザーレイヤーからネットワーク、セッション、ユーザーなどを単一のコンソールからトレースすることができます。

しきい値を付与したアラートを設定することができるのでパフォーマンス上のボトルネックなども容易に見つけ出すことができます。さらに、Horizonのインフラやユーザーのワークロードパターンを自動学習することができる高度が分析機能を持っているので、動的なしきい値に基づいたアラートを設定するなどのより高度な管理を行うこともできます。

●2-2.シトリックス XenApp、XenDesktopには「Director」

「Director」は、XenApp、XenDesktopの日常の状態を管理するためのコンソールです。管理者やヘルプデスク担当者がユーザーセッションを表示したり仮想環境の状態に関するレポートを確認したり通知やアラートなどを受け取るなどの監視業務に使用されます。また、仮想マシンの障害をピンポイントで特定して、サポートを必要とするユーザーをフォローすることが可能です。

●2-3.マイクロソフト Microsoft VDIには「SCCM」

SCCM(System Center Configuration Manager)は、Windows 含むさまざまな環境全体を管理するためにマイクロソフトが提供しているツールです。Windows以外のLinuxやMac OSなどを含む環境の管理を行うことができます。OSのアップデート管理やアプリケーションの展開/配布、モバイルデバイスなどを含むデバイス管理などの機能を持っています。VDI環境の管理では、対象となるデスクトップやシンクライアント、モバイルデバイスなどを含むすべてのクライアントの管理、および仮想デスクトップを管理する機能を、統合された単一のツールによって行うことで、仮想環境の管理をシンプルに行うことができ、管理工数を削減します。

付属の管理ツールを使った原因究明には限界も

これらのVDI環境管理ツールでは、通常運用時のリソース使用状態を監視するなどして、運用の正常化を図ることはできますが、障害発生時に障害箇所特定まではできても、具体的にどのようアプリケーションでどのような障害が発生しているのかを特定することは通常はできません。また、それらの管理ツールは各々のソリューションの範囲内のみが管理対象となっており、異なったソリューションや物理PCが混在している環境では効果が限定されます。

従って、上記のような管理ツールのみでは、障害等の根本的な解決に至るには困難であることは理解しておいた方が良いでしょう。


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