シンクライアント導入のメリット・デメリットとは?

昨今のテレワーク・リモートワーク化の流れが加速するに伴って、シンクライアントへの注目が集まっています。

ただ、「そもそもシンクライアントって何?」「導入方式や特徴ついて詳しく知りたい」そういった企業IT部門の担当者も多いのではないでしょうか?

そこで今回はそういった担当者へ向けて、シンクライアント導入について、概要やメリット・デメリットを詳しく解説していきます。

また、導入方式ごとの概要・特徴についても触れているので、企業で実際に導入を検討する際の参考にしてみてください。

1.シンクライアントとは

シンクライアントとは、シン(=thin:薄い、少ない)という言葉の意味からも分かるように、機能を最小限にした端末(=クライアント)のことを指します。

具体的には、端末自体にはデータを保存したり、アプリケーションをインストールしたりする大容量記憶媒体(HDD・SSD)が存在しません。

では、どのようにデータの保存や操作の処理を行うかというと、サーバー側で行うことになります。つまり、ディスプレイの表示と操作に特化した端末だといえるでしょう。

こういった特徴のために、昨今のテレワーク・リモートワーク化の流れの中で再び注目を集めています。VDI(仮想デスクトップ)との相性が良いのも、注目されている要因です。

2.シンクライアントのデメリット

注目されているだけあって良い点も多いのですが、当然ネガティブな面もあります。企業で導入を検討する際には、良い点と悪い点の両方を確認しておいて客観的に判断するようにしましょう。

複数ユーザーで同時共有するためサーバーに負担がかかる

シンクライアントを企業で導入する場合、複数の端末が同時に同じメインサーバーを共有することが考えられます。

シンクライアント端末側には最低限のリソースしか搭載されていません。複数の端末でメインサーバーを同時に共有すれば、会社のメインサーバーに大きな負担がかかります。

解決策としては、メインサーバー側のスペックを上げる、実装方式を検討するなどが挙げられます。実装方式については後ほど解説するので参考にしてください。

メインサーバーで一括管理されるため障害が起きた場合業務への影響が大きい

上でも説明したとおり、端末で操作するデータは全てメインサーバーで一括管理されます。

したがって、メインサーバーに障害が起きたときに、業務全体への影響が大きくなってしまうのです。

ただ、最近ではメインサーバーの貸し出し・運用を一括で行うサービスなども出てきています。こういったサービスを利用すれば、サーバー障害のリスクは最低限に抑えられるでしょう。

リモート環境ではネットワーク接続が必要

自宅や出先などのリモート環境下では、ネットワーク接続が必須になります。

なぜなら、シンクライアント端末はネットワークを介してサーバーに接続することで、サーバー内のデータを扱っているからです。基本的にオフラインでの操作はできません。

ネットワーク環境が脆弱な場合、動作が重くなってしまい操作に支障をきたします。テレワークなどで利用する場合には、安定した通信環境を確保するようにしましょう。

3.シンクライアントのメリット

ここでは、シンクライアントを導入するメリットについて詳しく解説していきます。良い点と悪い点を比較した上で、導入する際の参考にしてみてください。

サーバー管理が一元化でき管理の負担が少ない

シンクライアントを導入すると、サーバーを一括で管理ができます。

なぜなら、社員それぞれの端末自体でデータを保持せず、サーバーに保存されたデータを利用しているからです。全ての社員の端末が同じサーバーを共有すれば、管理の負担が大幅に少なくなります。

一元管理により運用コストが減る

上記のように端末を一括管理できることによって、端末の運用コストが下がります。

なぜなら、一括管理によって管理者・端末の使用者ともに管理の工数が減るからです。管理者、端末の使用者が得られる具体的な利点には、以下のようなものが挙げられます。

● 管理者:端末一台一台の管理をする必要がなくなり、一括で管理できる
● 端末の使用者:OSのアップデート・アプリケーションのインストール、アップデートから開放される

社員の使う端末の管理に割く時間が減れば、本来の業務に時間を割くことができます。コスト削減と同時に、全体としての生産性の向上も見込めるでしょう。

情報漏洩のリスクを削減できる

端末にデータが残らない仕組みになっているため、たとえ外出先でPCを紛失したとしても第三者にデータが渡ることはありません。

シンクライアントを利用できる仕組みが整っていれば、BYODにも対応することが可能です。BYODとは「Bring Your Own Device」の略語で、自身のデバイスを会社に持ち込んでそのまま作業をすることを意味します。

BYODに対応すれば、普段用と仕事用でデバイスを2台用意する必要がなくなりコスト削減に繋がります。また、社員が普段から使い慣れたデバイスを使用することで、生産性の向上にも繋がるでしょう。

ただし、自身のデバイスでそのまま業務にあたることは。情報漏えいなどセキュリティの面で問題があります。そこで、普段使用している端末をシンクライアント化できれば、自身のデバイスで会社のサーバーに安全にアクセスすることが可能になるということです。

4.シンクライアントを導入する際の実装について

ここでは、シンクライアントを実装する際の具体的な実装方式について解説します。

一言でシンクライアントといっても、様々な実装方式があり特徴も様々です。それぞれの方式の概要・特徴をチェックして、あなたの企業に合った実装方式を選択しましょう。

画面転送型

シンクライアントの実装方式は、大きく分けて「画面転送方式」と「ネットブート型」の2種類があります。

ブレードPC型

ブレードPC型とは、シンクライアント端末ごとに高性能なブレードPCを配置し、接続する方式のことです。

メリットとしては、社員の端末それぞれに1台のブレードPCが割り当てられるため、高度な処理ができるということが挙げられます。

一方で、管理しなければならないPCが増えるため、運用の手間やコストがかかってしまうのが欠点です。

サーバーベース型

サーバーベース型とは、各シンクライアント端末が1つのサーバーに接続し、同じ単一のアプリケーションを共有する方式のことです。

メリットとしては、1つのアプリケーションを共有するため、ハイスペックなサーバーを必要としないという点が挙げられます。

一方で、サーバーやアプリケーションに不具合が生じた場合には、接続している全社員の端末に影響が及んでしまうというのが欠点です。

VDI(デスクトップ仮想化)型

VDI(デスクトップ仮想化)型とは、1つのサーバー上に複数の仮想デスクトップ環境を構築し、各シンクライアントが別々の仮想デスクトップに接続する方式のことです。

メリットとしては、各端末が別々のデスクトップ環境を利用するため、不具合の影響が全体に及びにくいということが挙げられます。また、サーバー台数が一台でも複数の仮想デスクトップを構築できるので、コスト削減・省スペースの効果も得られます。

強いていうならば、仮想デスクトップ化専用ソフトウェアの使用料がかかってしまうことだけが欠点だといえるでしょう。

ただ、Microsoft Azure上で展開しているVDIのサービスであれば仮想デスクトップ化専用ソフトウェアは不要です。既にMicrosoft 365 E3以上のライセンス、もしくはWindows 10 E3以上のライセンスをお持ちの企業様は追加ライセンス不要にて、VDIをご利用いただけますのでとてもお得です。

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ネットブート型

ネットブート型とは、サーバー上のイメージファイルにネットワーク経由でダウンロードし、OSやアプリケーションを起動する接続方式のことです。

メリットとしては、社員の端末それぞれがサーバーを占有できるため、通常のPC(=ファットクライアント端末)を使うのと同じ感覚で利用できることが挙げられます。

一方で、安定したネットワーク環境や高いサーバーのスペックが求められるため、環境を整えるのにコストがかかる場合があります。また、ネットワーク経由で操作を行うため、セキュリティの安全性も担保する必要があるでしょう。

4.まとめ

今回は、シンクライアント導入のメリット・デメリットについて詳しく解説してきました。

本記事の要点は、以下のとおりです。

● シンクライアントとは、データを保存したりする記憶媒体を持たない端末のこと
● シンクライアントには、端末を一元管理でき、コストを削減できるメリットがある
● 実装方式によって特徴が異なるので、実装を検討する際には吟味する必要がある

このように、シンクライアントを導入することには企業にとって大きな利点があります。特にテレワーク・リモートワーク化を進める上では大きな助けになるでしょう。

この記事を参考にして、導入方式ごとのメリット・デメリットについても把握しておき、シンクライアントを導入する際の参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

Azure導入支援デスク 編集部
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