オンプレミスからクラウド移行 よくある誤解と失敗しない手順とは

 

オンプレミスのシステムでは、サーバー機器の更改に合わせて、5年に1度程度のタイミングでシステムの入れ替えが必要になります。また自社で保有している機器の資産管理や構成管理、あるいはバックアップや障害対応など管理負荷も大きくなりがちです。そこで最近では、できるだけクラウドにシステムを移行したいという企業が増えてきました。しかし実際に移行して期待通りの成果を達成した企業は半数以下という調査もあります。そこで本記事では、クラウドに移行する際に生じがちな誤解と失敗しないための手順を解説します。

こんな人にオススメの記事です
・社内システムのクラウド化を検討している方
・クラウド移行の際の注意点を知っておきたい方

 

1. オンプレミスからクラウド移行するメリットとは?

オンプレミスからクラウドに移行することによるメリットは、一般的に以下の通りと考えられています。

●コストの最適化
ワークロードの最適化による実行コストの削減はもちろん、リソース、保守、機器を置くスペースのコストなどを節約できます

●柔軟性
ユーザー数や業務量の急激な増減に柔軟に対応できます

●パフォーマンスの向上
グローバル企業であれば、グローバル展開しているクラウドプラットフォームを利用することで、近い場所でワークロードを実行することができ、パフォーマンスが向上します

●セキュリティの強化
「クラウドはセキュリティが不安」と考えられがちですが、公的認証を得ているプラットフォームであれば、最新のセキュリティツールの運用やセキュリティ修正プログラムの適用をクラウドプロバイダーが実施するため、セキュリティの強化につながることが大半です

●コンプライアンスの強化
コンプライアンス要件を満たすための特別なオファーを提供するクラウドプラットフォームが存在し、それを活用することでコンプライアンスの強化が可能です

● 障害対応負荷の削減
ほとんどのクラウドプロバイダーは組み込みのバックアップおよび回復機能を提供しており、それを利用することで障害対応の負荷が削減できます

●運用管理と監視の簡素化
クラウドプロバイダーがWebで提供している管理コンソールを使用することで、クラウドとオンプレミスを一元管理および監視できるようになってきました

これだけのメリットがあるとされるクラウドですが、実は満足していない企業が多いのgが実態です。アクセンチュアの調査では 、「クラウド移行により期待通りの成果を達成している」と答えた企業の割合が、大規模な移行では46%、小規模な移行では28%でした。つまり半数以上がクラウド移行に満足していないことになります。

 

「クラウド移行により期待通りの成果を達成している」と回答した企業の割合

クラウドに満足していない企業も少なくないことが分かります
クラウド移行のアンケート

データ元:https://www.accenture.com/jp-ja/insights/technology/maximize-cloud-value

2. クラウド移行のよくある誤解と解決策

なぜ多くの企業がクラウド移行に満足していないのでしょうか。それはクラウドの特質に対する理解が不足していることで、過度な期待を抱いていたり、クラウドのメリットが生かせていなかったりするためなのです。

多くの企業のクラウド移行をご支援してきた日商エレクトロニクスがお客様から伺った話をまとめると、クラウドに抱いている「誤解」は大きく5つに集約できます。

誤解① クラウドはオンプレミスよりコストがかかる

クラウドのコストを算定する場合、ハードウェアの費用だけで考えがちですが、5年間のハードウェア費用を計算するとクラウドのほうが高くなることが多いのです。クラウドのコストを考える場合には総コストで考えることが肝要です。

オンプレミスでは、障害対応、バックアップ、維持・管理・保守、事業継続、運用管理者の教育などのコストが発生しますが、それらのコストを積算した上で、クラウドにかかるコストと比較しなければなりません。

▶クラウドは総コストで考えよう

全体のコストを比較すると、クラウドは自社の負担が少くコストメリットが生まれます

クラウド オンプレミスのコスト比較

誤解② クラウドへの移行は簡単

クラウドの管理コンソールでは、多くの操作をワンクリックで実行できます。そのためのクラウドへの移行も簡単と思う人も多いようです。しかし闇雲に移行すると、のちのち思わぬトラブルや追加コストが発生します。移行には手順があり、それに従う必要があるのです。その手順はけっして簡単なものではなく、専門的な知見やノウハウが必要になります。移行手順については後述します。

▶クラウド移行の手順を正しく理解しよう

クラウド移行の手順を省略すると思わぬトラブルが発生したり、想定外のコストがかかります

クラウド移行の手順

誤解③ すべてのシステムをクラウドに持っていける

システムの保守や運用はビジネス価値を生まないということで、すべてのシステムをクラウド化しようという「極端」な方針を掲げる企業もあります。しかしクラウドには向くシステムと向かないシステムがあるのが実態です。どうしても自社でコントロールする必要があったり、OSやミドルウェアがクラウドに対応していなかったり、大幅なカスタマイズがされていたり、クラウド版のライセンスが高かったりするシステムは、クラウドに移行しても想定外のコストや時間がかかるケースがあります。

▶クラウド向き、不向きを判断しよう

全てをクラウド移行するのではなく、オンプレミスとのハイブリット活用が推奨です

クラウドに向いているシステム

誤解④ クラウドを活用し簡単にいろいろなことができる

日本でもDXの成功事例が出てきています。その事例を見て、クラウドを利用すれば業務の自動化やデータ活用が簡単にできると期待する人も多いようです。しかし実際にはクラウドに対する知見やノウハウが不足しているために進まないという事例が後を絶ちません。

なおクラウドを活用する場合には、AWSとAzureではセオリーが違うとされています。AWSは、社内人材を採用または育成してできるだけ自社で進め、最終的にはフルクラウドを目指すのが良いとされます。一方Azureはそもそもパートナーからしか購入できないため、パートナーの知見を活用して、自社の目的に合ったハイブリッドクラウドを目指すのが良いとされています。もちろん例外もありますが、考慮に値するセオリーと言えます。

▶自社に合ったクラウドベンダーを選ぼう

社内システムの特性や社内のクラウド人材を確認し、選択します

Azure AWSの違い

誤解⑤ 既存のベンダーにすぐ対応してもらえる

オンプレミスのシステムを構築・運用しているベンダーにクラウド移行も対応してもらえると考えているユーザーが多いのですが、そうはいかないケースもあります。そのベンダーがオンプレミスには詳しいがクラウドには詳しくなければ、現在の設計をそのままクラウドに持ち込めない場合には行き詰まってしまいます。それではとクラウドに詳しいベンダーに依頼しても、オンプレミスに詳しくなければやはり行き詰まります。

オンプレミスからクラウドに移行する場合やハイブリッドクラウドを構築する場合には、クラウドとオンプレミスの両方に精通したベンダーを選ぶ必要があるのです。

▶オンプレとクラウド 両方に詳しいパートナーを選ぼう

自社で作りこめるオンプレミスと、クラウドでは設計や運用が変わります

オンプレミスからクラウド移行 パートナー選び

3. オンプレミスからクラウドへの移行に失敗しないための手順とは?

前述の「誤解② クラウドへの移行は簡単」で、クラウドには移行手順があり、それを遵守しないと、思わぬトラブルや追加コストに見舞われると述べました。その移行手順をまとめたものが次の図です。

オンプレミスからクラウド移行のステップ

クラウド移行には、設計、検証、移行、運用の4つのステップがあります。このうちの移行ステップだけを見ると確かに簡単に見えますが、のちのち困ったことにならないためには、それ以前の設計・検証といった準備が大切です。その中で最も重要なのが、設計ステップです。Azureの知見があるうえでこの設計ステップでしっかり検討されていれば、ほぼ失敗することはないと言えます。

設計ステップでよくある「落とし穴」は以下のようなものです。

  • 既存以外のライセンスやサポートが必要なのを見落としていた
  • 社内からクラウドへの通信が新たに発生することを忘れていて帯域不足でオンプレミス側のゲートウェイが逼迫したり、クラウド移行のための帯域の用意を忘れて業務に悪影響が発生したりした
  • コストの発生範囲を意識せずに進めて、実運用になってから部署にコストを振り分けるための手間が発生した
  • クラウド移行によるブラックボックス化を考慮せず、新たに必要となるメーカーサポートを運用に組み込んでいなかった
  • デフォルト設定のまま利用したため仮想マシンが外部に公開されたり、ログがしっかり保管されなかったりして、セキュリティリスクが高まった

こうした落とし穴にはまらないためには、以下の3つのポイントをしっかり検討することが大切です。

ポイント1 全体を見通したインフラ設計

クラウドだけでなくオンプレミスも含めたインフラ全体を考慮します。具体的には、クラウドサーバーやデータの公開設定、通信先の制御基準、ログデータの管理方法、必要なセキュリティ対策などを検討します。

ポイント2 十分なネットワーク帯域確保

クラウド利用を想定したネットワークの増強を行わなければなりません。そのためには何にどれだけの通信量が必要かを明確にします。

ポイント3 コスト管理方法の確立

自社の運用に合わせて、クラウド費用の請求単位を構成する必要があります。また新しくクラウドを利用する場合の社内ワークフローや利用ルールを策定しなければなりません。

4. クラウド移行のノウハウを無料で学ぶ方法

設計フェーズを成功させるための3つのポイントを紹介しましたが、実施しようとすると様々な知見やノウハウが必要になってきます。そこで設計フェーズを支援するために用意されているMicrosoft の無料サービスを紹介しましょう。

Microsoft Learn
Microsoft製品についての対話型オンライントレーニングプラットフォームです。Azureサンドボックス内で実際にプログラム作成などができる実践型トレーニングが充実しています。

https://www.microsoft.com/ja-jp/flexibility/training-and-certification-solutions

Microsoft Azure トレーニング

 

Microsoft Azure移行ハンズオンセミナー
実際に移行作業を試してみたいユーザー向けに日商エレクトロニクスが提供している少人数制のハンズオンセミナーです。参加者は具体的な移行手順の説明を受け、日商エレクトロニクスが用意したAzureサブスクリプションで実際に作業しながら、講師に質問もできます。

Azure 移行ハンズオンセミナー

>>Azure ハンズオンセミナーの詳細はこちら

 

自社環境がクラウド移行に向いているか判断したい方向けには無償のアセスメントサービスもある

その他に、現在稼働しているシステムを棚卸しし、それぞれのクラウドへの向き不向きを判断する無償の「Azure移行診断サービス」もございます。成果物として移行計画案とそれに基づくコスト試算が明示されるので、納得した上でクラウド化の可否が判断できます。詳しくはこちらを参照してください。

Azure移行診断サービス レポート

>>Azure移行診断サービスの詳細はこちら

5. まとめ

オンプレミスからクラウドへ移行することで様々なメリットがありますが、実際に移行した企業の半数以上は期待通りの成果を得られていません。その理由は、クラウドに対する理解不足で過度な期待をしたり、クラウドの良さを生かし切れていなかったりすることにあります。

クラウド移行には手順があり、その中でも設計段階でどれだけしっかり検討されているかがクラウド移行の成否を決めると言っても過言ではありません。検討には、全体を見通したインフラ設計、十分なネットワークの帯域確保、コスト管理方法の確立といった3つの大きなポイントがあります。どれを検討するにもクラウドに関する様々な知見とノウハウが必要です。

特にAzureへの移行に関しては、オンプレミスとクラウドの両方に精通したパートナーと二人三脚で進めることがセオリーだと考えられています。日商エレクトロニクスには、どちらに関しても豊富な実績がありますので、Azureへの移行を検討されているのであれば、お気軽にご相談いただければと存じます。

また参考資料(「オンプレミスからMicrosoft Azureへ~はじめてでも安心な移行方法とは?~」)も用意しております。ぜひご活用ください!

\ オンプレミスからAzure移行!はじめてでも安心な移行方法とは? /

オンプレからAzure 移行の資料


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この記事を書いた人

Azure導入支援デスク 編集部
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